研究会に参加して  浜尾夕美


 研究会という大変貴重な時間を頂きましたこと深く感謝申し上げます。
お誘いくださいまして、どうもありがとうございました。
 私の様な者には専門的なコメントは残念ながら叶いませんが、本当に有意義な時間を過ごさせて頂きました。
中島先生のすばらしいご研究の成果を資料としていただいて、緊張した面持ちでおりましたところ、
それとは裏腹に3人の方々が、かしこまった形式ではなく、ごく普段着的な軽妙な会話であらゆる視点から切り込んでいくのに大変楽しく、改めて興味もわいてまいりました。
 モティーフの変容、発展は、その人のくせもセンスも全部ひっくるめて「作曲家の細胞」なんだなと感じ入りました。
細部では、さりげない変容でも、曲全体に視野を広げていくと、作曲家の意図する計画性がうかがえる。
 どの作曲家にも言えますが、とりわけショパンにおいては、即興的な演奏でなければ作品の魅力を伝えることができないように思えます。時間という限られた寿命の世界で、非常に研ぎ澄まされた感覚的、理性的な全精神の流動において、あたかも今そこで生み出されたかのごとく即興的な演奏というのは、どのように生み出されていくのか、どのような探求からそこに結びついていくのか。その意味においても即興的に聴こえるさりげなく美しい、実に自然なモティーフ変容が、偶然の合致も含めて作曲家のもくろみとともに流れ、発展していくさまを透明に見透かしたような気がいたしました。即興性という言葉が、演奏において、とかくインスピレーションだけが一人歩きすることもありますが、パネラーの作曲家の方々の視点で知的に解析していくことは、あらためてその即興性のもと、細胞がどんなものかを覗いたような気がいたしました。
あたかも偶然のできごとのように自然でよどみなく展開される音楽の素晴らしさというものをバラード第3番を通じて改めて実感させられました。
 即興的な演奏は、常に私の探求するところです。大変勝手な感想を述べてしまいました。
作品の分析をどのように演奏につなげて行けばよいのかという点で、感覚的、知的バランスが大切だということを痛感しています。