研究セミナー 『アンサンブルの研究 T』
《 ヴァイオリンとピアノ 》
《報 告!》
本年度の第2回セミナーアンサンブルの研究(1)は6月22日(土)16:30〜19:00 松尾スタインウェイAスタジオにて開催されました。生憎、宣伝不足で参加者は少な目でしたが、内容的には非常に充実したものとなり、大きな成果を上げることが出来ました。
まず、本日の講師の北川靖子さんのヴァイオリン、加藤智子さんのピアノでベートーヴェンの『スプリングソナタ』が演奏され、その演奏について、演奏系の参加者、作曲系の参加者から細部について色々な意見が出されました。
後半は北川靖子さんが引き続きヴァイオリンを担当し、渡辺文子さんのピアノで、ブラームスのソナタ第一番(ト長調が演奏され、同様に講師、および参加者から細部について色々な意見が出されました。
作曲系の参加者は、どちらかというとモチーフ、バスライン、隠された旋律線など作品の構造面に焦点をあて、演奏解釈に対する鋭い指摘をしていたのに対し、演奏系の人達からは、タッチや、ペタリングなど奏法にまで立ち寄った具体的な指摘がなされました。
特に、ピアニストの北川暁子さんが時々ステージに登場し、自らの実演を混じえながらの説明は、明快で説得力がありました。例えば一口にクレッシェンドといっても、そのやり方はそれそれの音楽のそれぞれの局面で異なり、スタッカート気味に弾くか、重いタッチで弾くか、左手のバスを強く出すか、右手の旋律線を強く出すか、ペタルを深く踏むか、浅く踏むかなど、言葉で表現することが不可能なほど多様な可能性があります。しかし、実際に演奏し音で表すことで、その音楽にはどのような演奏表現の可能性があるか、ということが聴き手に明確に伝わります。
本会のセミの特徴は、演奏家、作曲家、音楽研究者など様々な人々が参加することで、演奏解釈にしろ作品解釈にしろ、幅広く立体的に、且つより深く掘り下げることが出来る点にあります。
このような催しは、何回も継続し、そして本会関係者のみならず、外部関係者にも積極的に参加を呼びかけ、より実りあるものにして行くべきだと思いました。
事務局長:中島洋一
取り上げた楽曲
ベートーヴェン スプリングソナタ 第一楽章
ブラームス ソナタ第一番 G-Dur Op.78 第一楽章
ヴァイオリン&講師 北川靖子 司会:助川敏弥
ピアノ 加藤智子(ベートーヴェン)、渡辺文子(ブラームス)
写真撮影: 中島 洋一
左 ベートーヴェンを演奏する北川靖子(Vl)と加藤智子(P)、右ブラームスを演奏する北川靖子(Vl)と渡辺文子(P)
実演入りで指導した北川暁子さん
司会の助川敏弥氏
講師の北川靖子さん(ヴァイオリン)
公演企画部長の北條直彦氏